2013年03月13日

<『羅生門』などを収録> 芥川龍之介全集(第1巻)新版 [ 芥川龍之介 ](取扱店:楽天ブックス)



■目次
バルタザアル/大川の水/「ケルトの薄明」より/未来創刊号/老年/紫天鵞絨/桐/春の心臓/薔薇/青年と死と/客中恋/若人/クラリモンド/砂上遅日/ひょつとこ/松江印象記/羅生門/松浦一氏の「文学の本質」に就いて/鼻/編輯後に/孤独地獄/父/虱/酒虫/翡翠/校正後に/仙人/薄雪双紙/野呂松人形/芋粥/猿/創作/校正後に/手巾/出帆/ジアン、クリストフ


■青空文庫から『羅生門』(新字新仮名)を一部抜粋
 ある日の暮方の事である。一人の下人(げにん)が、羅生門(らしょうもん)の下で雨やみを待っていた。
 広い門の下には、この男のほかに誰もいない。ただ、所々丹塗(にぬり)の剥(は)げた、大きな円柱(まるばしら)に、蟋蟀(きりぎりす)が一匹とまっている。羅生門が、朱雀大路(すざくおおじ)にある以上は、この男のほかにも、雨やみをする市女笠(いちめがさ)や揉烏帽子(もみえぼし)が、もう二三人はありそうなものである。それが、この男のほかには誰もいない。
 何故かと云うと、この二三年、京都には、地震とか辻風(つじかぜ)とか火事とか饑饉とか云う災(わざわい)がつづいて起った。そこで洛中(らくちゅう)のさびれ方は一通りではない。旧記によると、仏像や仏具を打砕いて、その丹(に)がついたり、金銀の箔(はく)がついたりした木を、路ばたにつみ重ねて、薪(たきぎ)の料(しろ)に売っていたと云う事である。洛中がその始末であるから、羅生門の修理などは、元より誰も捨てて顧る者がなかった。するとその荒れ果てたのをよい事にして、狐狸(こり)が棲(す)む。盗人(ぬすびと)が棲む。とうとうしまいには、引取り手のない死人を、この門へ持って来て、棄てて行くと云う習慣さえ出来た。そこで、日の目が見えなくなると、誰でも気味を悪るがって、この門の近所へは足ぶみをしない事になってしまったのである。


■『羅生門』などの著作権が切れている作品は青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)でも読むことができます。



ラベル:芥川龍之介
posted by 657575 at 20:24| 小説 | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。